名画座を中心に、温泉・おでん街のある昭和の香り高いエリアになればいい
2009-11-13 Fri
「七間町から映画館が消える」新静岡センター再開発ビルに静活がシネマコンプレックスとして十スクリーンの映画館を入れることが決定し、その後の七間町にある映画館の存続は白紙という新聞発表があった。新静岡センターに十スクリーンがあれば、清水、藤枝にシネコンができ、映画を観る人口の減少を考えると、現在の七間町にある四映画館九スクリーンは明らかに供給過多である。構造上残すのであれば、七間町にある全ての映画館に莫大な費用をかけて耐震工事をしなければならないこともよく理解できる。だが、明治期の若竹座から始まって現在に至り、静岡市も「七ぶらシネマ通り」として認め、税金を投入してまで整備したモニュメント群も立ち並ぶ、静岡市民の文化遺産と化している七間町映画館街。(静岡市はフランス・カンヌと姉妹都市でもある。)その中で、せめて大スクリーンと文化的財産である壁画を有し広いステージまで残っている「オリオン座」だけでも残すことはできないのだろうか。ビデオ・DVDによって映画人口は減少した。家庭ではホームシアターとして大画面でDVDを観ることが流行だが、シネコンで観る映画は、ホームシアターと同じではないか。オリオン座のような大スクリーンで観てこそ映画を観る楽しさだ、と思うのは私だけだろうか。
新作をセンターのシネコンで上映して、名画と呼ばれるものを七間町の映画館で観るという方法もある。オリオン座の舞台を利用して落語会、大道芸の発表会を開くという方法もある。
ただ、七間町商店街と周辺住民がこれからの「七ぶらシネマ通り」とどう関わるのか。まず、自らの考えをまとめ上げて映画館跡と連携を取ることが大切であると思う。
(個人的には、地方の渋谷と呼ばれている駅前の丸井、109、パルコに行かない四十代以上の人たちが集まり、落ち着いて買い物ができる専門店街。中心に名画座があり、温泉(スーパー銭湯)もあり、近くにおでん街も存在するエバーグリーンな昭和の香りがする七間町が希望なのですが・・・。)
駅周辺に全てをまとめ、移動に便利というだけで街をコンパクトにすることは決して街を良くすることではない。静岡市街地の多面的な広がりを保つことが大切。そして、人々が歩いて街を散策することで、その移動中にお気に入りの店を発見することを楽しむ。これこそが街が生きていると言えるのではないだろうか。
商店街もただ人がいっぱい来れば良いのではなく、個人店と同じで、ターゲットを絞り込み、商品をより専門化していくことが生き残る道だと思う。
一生の宝
2009-11-13 Fri
三月に葵小学校で五・六年生を対象に、静岡大学小和田哲男教授による「駿府と家康」という特別授業が行われた。保護者も受講できたので、私も参加させてもらった。日本史が大好きな私が、戦国時代研究における第一人者・小和田教授の授業に出席できるチャンスを得たのだから、オフコース時代から大好きな小田和正のコンサートに行くのと同じように、数日前からワクワクし、そして当日は感動した。
私は小学生の頃、社会科を好きでなかったが、当時の校長先生であった静岡大学教授・若林敦之先生に、学校で家康の話をしていただいて以来、日本史が大好きになり、現在に至っている。小学生の時は「ぼくたちの校長先生」であった若林先生が、当時では家康に関して第一人者であったという事実が、著書やテレビなどのメディアによって私が高校生・大学生と成長し時が経つに連れ理解できるようになり、小学生の時に貴重な経験をしたと、大人になって感じた。
何事も大切なのは、本物を知ること。子どもの頃だからこそ、本物に触れることは大切なことだ。葵小学校の子どもたちにとって、小和田先生から駿府城内にある葵という校名である校舎の中で、徳川家康について話をしていただき、また質問して答えていただいたことは、一生の宝となるだろう。
食事も同じ。子どもたちに本物の美味しさを教えることこそ、味覚文化にとって一番大切なことではないだろうかと考える。
アソカ幼稚園閉園
2009-04-01 Wed
今年三月のアソカ幼稚園閉園を前に、昭和四十五年三月卒園生と当時の先生方が三十九年ぶりに幼稚園に集まりました。アソカ幼稚園は、常盤町・宝台院境内にある幼稚園です。園舎園庭は四十年前とはまったく異なっている状態。久しぶりに集まった皆様をどうやって「あの頃」に戻すかを、幹事の一人として考えたのですが、結局は五感すべてを刺激することにしました。当時の卒園アルバムをコピーして一人ずつ手渡し、まず自分を探してもらい、あの頃の名札を身に付けて、まだ残っていた、当時座っていた木製イスに全員が座り、仏様に献香・献花し、あの頃は毎日食べていた肝油ゼリーを食べて、同窓会をスタートさせました。そうしたら、全員で園歌を一回で大合唱出来たのです。
体で覚えた木製イスの感覚、耳で覚えたオルガンのメロディー、舌で覚えた味、そして線香の香り、頭で覚えたことは時間とともに忘れてしまいますが、頭以外で覚えたことはいくつになっても忘れないものなのです。
特に味覚の力は大したものです。「おふくろの味」「家庭の味」「地元の味」は、一人ひとりがいつまでも覚えているものなのです。誰にでも「懐かしい味」はあります。
伝統の味を守るということは、現在の生活の中で、味を楽しむ以外に、一人ひとりが懐かしい「あの頃」に戻るタイムマシーンの役割をあるのだということに気づいたこの頃です。
トレンドとトラッド
2009-03-01 Sun
野菜・果実・鮮魚と比べて肉には旬というものがありません。鹿や猪のように狩猟解禁時期にのみ食される「野生もの」とは違い、牛豚鶏は一年中出荷されます。だからといって季節感のない商売はお客様に支持されません。クリスマスのローストチキンがお肉屋さんの季節を感じる商品ですが、当店ではローストチキン(鶏もも骨付肉)を通常販売していないので、クリスマスでもローストチキンは販売せずに通常販売している『ローストビーフ』『やき豚』を売りにしています。一年通して販売している商品ならば、その時に自信を持って販売できますが、唯流行だからという理由でその時だけの付け焼き刃で商品を販売したくないというのが当店の考えです。
さて、そこでバレンタインデーに当店のとった行動は「ハート型コロッケの限定販売」です。
毎日販売しているコロッケの型をハートにするだけなのですが、毎日大人気で、予約で完売になってしまいます。これなら毎日販売している自信のある商品に季節感を持たせて、
そしてお客様に喜んでいただけます。
トレンド(流行)を追いかけ目先を変えるだけで一年過ごすのではなく、季節感という変化するものの前に、自信のある通常販売のものを売るという筋が通ってブレずに守られること、これがトラッド(伝統)なのかなと最近感じるようになりました。
トレンドとトラッド。老舗伝統の味を守りながら変化を付けることの難しさを感じるこの頃です。そう言えば、あの「酒悦」が福神漬入り(みじん切りで最初から入っている)レトルトカレーの販売を開始したという。その気持ちがよく分かります。
店はお客様のためにある
2009-02-01 Sun
「静岡ぐるぐるマップ」創刊二十五周年記念として、「静岡遺産・庶民の名店老舗25店」に当店が選ばれた。静岡に歴史のある店舗が数多くある中で、当店が二十五店舗の中に入った
ことが驚きだった。そして二十五店舗の中に入れていただいたお客様の支持に感謝をしている。
また、静岡リビング「2008年ハートフル大賞メンチカツ部門」で当店が一位に選ばれたことも、お客様の支持の表れである。当店にご来店いただいた全てのお客様に感謝したい。
この二つの受賞で、お客様は店に対していつでも同じ上質な品物を相当な価格で販売することを望んでいることがよく分かった。売る側として毎日同じことを繰り返している仕事の中で、
「売れた、売れない」で一喜一憂している自分を大変小さく感じ、「店はお客様のためにある」
という倉本長治の商訓を思い出した。
「勝つなと思うな、思えば負け」と美空ひばりは「柔」で歌っているが、売ろうとしても
売れないこの不況下にあって、「売ろうと思うな、思えば売れない」のである。
「店はお客様のためにある」。これだけを考えていれば良いのだと開き直った今日この頃の
私である。
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