【第八話】通年の精肉販売ができたのはコロッケのおかげも
2009-11-13 Fri
お肉屋さんの○○と聞いたら、多くの人が「コロッケ」と答えるでしょう。大石精肉店でもコロッケは、大正の頃から現在に至るまでの定番商品(スタンダード)です。「♪今日もコロッケ・・・♪」と、あの有名な「コロッケの唄」が大流行したように、日本の洋食文化はコロッケと共に全国の家庭の食卓へと広がりました。実は、このコロッケ、全国のお肉屋さんにとって救世主だったのです。肉を食べたいが高級品であり、当時の家族構成も大家族が主流でしたから、家族全員が満足するほど肉を購入することは経済的に大変なことでした。コロッケはほとんどがジャガイモ、タマネギであり、肉の使用量は少量で済みますし、当時は洋食メニューが珍しい頃でしたから、子どもから老人までが喜んで食べました。また、低価格でボリュームがあります。以上は消費者側の考えです。
では、お肉屋さんから見た考えはどうでしょうか。一つは、洋食を食卓に広げた立役者であるということ。ナイフで切って食べるステーキとは違い、やわらかく、子どもから老人まで全ての年齢層に好まれるメニューであるということ。そして、フライであるためボリュームもあります。
二つ目は「ロス対策」。コロッケは翌日になって鮮度が低下した肉であっても、惣菜という付加価値を付けて販売することができます。冷蔵、冷凍設備が現在のように充分でなかった昔では、それは大変ありがたいことでした。
三つ目は、自家製ラードをどこのお肉屋さんも作っていたということ。当時の精肉店は一頭をさばいて販売していたので、肉以外に骨・脂が発生することになります。毛は歯ブラシ、皮は皮製品、骨はスープ、脂はラード、肉・内臓は店頭にというように全てが商品になっていたのです。即ち、肉屋さんには、単品で仕入れなくても自家製ラードが店頭にあった時代だったのです。
「洋食文化の伝播」「ロス対策」「自家製ラードの消費」この三つが重なり合って「お肉屋さんのコロッケ」が全国的に広がって行ったのです。今日でも、青果・鮮魚店に比べて精肉店の惣菜色が強く出ている原因は、大正時代からのコロッケのおかげなのです。
当店でも大正の頃より、ふかしたホクホクの国産ジャガイモをつぶし、国産の牛豚合挽肉、タマネギの炒めたものを加え、小判型に成型し、自家製ラードでこんがりと香ばしく揚げております。これぞ「大正ロマンの味」。大石精肉店が冬期だけの精肉販売から通年の精肉販売になるためには、『やき豚』と共にこの『コロッケ』も不可欠な商品でした。
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